本楽家 ( ほんがくか ) 通信

本にまつわるあれこれを楽しむ、日本本楽家協会の活動報告です。

無人島に1冊、持っていくなら...?


 誰しもが1度は質問された、あるいは耳にしたことのある質問の一つ。

 「無人島に1冊だけ持っていくとしたらどんな本を持っていきますか?」

 初めてこの質問にぶつかったときの答えは「そんなの決められない!!」という答えにならない答え。
 2度目、少しは考えたつもりになって「広辞苑とかの厚い辞書」。
 でもこの質問には、暗に「バカンスとして」というのが頭についているのではと、少しひねくれた考えを持ち始めた3度目(無回答)。


 さて無人島にまつわる本として次の本があります(なかば強引ですが)。

「無人島に生きる十六人」須川邦彦

 表紙絵の一見、朗らかな絵から小説と勘違い。でもこれは実話でした。
 太平洋上で船が座礁し、その乗組員16人がなんとか無人島へたどり着き、そこでいつ来るとも知れない助けを待ちながら生活。そして無事助かるまでのお話。
 いわゆる漂流ものの「小説」を生半可知っている私にとっては、関心、感心、驚き、敬服、の連続。
 悲壮感がまったくない。どころかなんだか無人島生活がとても楽しそうにさえ感じてきました。
 でもそれは非常に多くの訓練と経験を積んだ者だからこそなし得ることだとも思いました。

 随所に書かれたさりげない言葉にとても感じ入ったので、その極々一部を珍しく引用。

 『一つ、島で手にはいるもので、くらして行く。
  二つ、できない相談をいわないこと。
  三つ、規則正しい生活をすること。
  四つ、愉快な生活を心がけること。』

 これは無人島で暮らすことになった時に決めた「四つのきまり」です。なかなか言えない、そして守ることの難しい決まりだと思いました。

 ところでタイトルの質問。今ならもちろん、「無人島に生きる十六人」。これを持っていきます。
 (でもこの本から得た「知識」だけじゃ結局、生き延びることは出来ないですね。「知恵」と「強い心」を身につけなくては)