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本楽家 ( ほんがくか ) 通信

本にまつわるあれこれを楽しむ、日本本楽家協会の活動報告です。

読みたくなるカバー絵


 本1冊毎に様々な装丁で楽しいハードカバーと違って、文庫の場合は出版社やシリーズで統一されています。なので個々の文庫の個性は自然と表紙の絵に表れてくるような気がします。
 もっとも平積みしてもらわないと、その個性も十分発揮されないのですが...。

 筒井康隆「旅のラゴス新潮文庫 を読みました。

 これを読むキッカケはこの本のカバー絵に惹かれたことが大きいです。
 (もちろん、これを紹介してくれたSILLYさんには大感謝)

 私の場合、ノンフィクションと比べると小説のカバー絵は読む際にかなり重要ポイント。小説のストーリが「突飛」であればあるほどその表紙を見て決めることが多いです。
 なぜならその小説世界に入る上での入り口だと思っているので。
 だから自分にとって「好ましい」カバー絵だと小説世界にとても入りやすい。

 なお岩波文庫のようにあってないような場合もあります。その場合は自分で小説世界を一から造り上げていく楽しみはありますが、ここでは敢えて触れません。

 さてこの本のカバー絵を描いている人は影山徹さん。
 この小説のカバー絵では上空から見下ろした風景がとても奥行きのある広い世界をイメージできて、これからどんな旅が始まるのか読む前から楽しみにさせてくれました。

 そういえば似たような気持ちを前にも持ったなぁと思いつつ探してみたらありました。
 
 川端裕人「The S.O.U.P.」角川文庫

 これもネットゲームというバーチャルな世界が小説の舞台の一つとして登場しますが、その想像を膨らませるようなカバーでした。

 さらに思い起こすと確か、池澤夏樹さんの文庫にも使われていたような...。
 これは読んでないのでネットで検索したところ、ありました。

 池澤夏樹「マシアス・ギリの失脚」新潮文庫

 記憶があいまいですが、池澤さんのコメントで「終わりのない小説を書きたかった」みたいなことをこの小説に対して言っていたような覚えがあります(未確認)。

 私が知っているのはこの3冊しかないので説得力はありませんが、影山さんの絵というのは「果てしない世界」みたいなものを表現するのが得意なのかな、と感じました。

 ある作家の小説を読むのではなく影山さんの描く世界を読むという意味で、次は上記の池澤さんの小説を読んで見るのもよいかな。


 最後に申し訳程度に小説の感想を少し。
 旅を続ける主人公ラゴス。彼の目を通して「失われた高度文明」を取り戻していく世界を描いたのかなと感じました。
 また一方で、彼にとっては文明の発展はさほど重要ではかったのかなと思いました。
 人と人とのつながり、思いやり、これがなくては文明が高度化しても決して世界は良い方には向かわないといいたいのかな、という気もしました。

 ちょっと難しく考えすぎかもしれません。
 でも単純に面白く、そして「小説世界にどっぷり浸れる」小説でした。