本楽家 ( ほんがくか ) 通信

本にまつわるあれこれを楽しむ、日本本楽家協会の活動報告です。

嘘のような生物、本当っぽいけどいないヤツ



 最近は調べ物をするときはまず、インターネットで検索して調べてしまう。
 「便利だなぁ」なんて思いながらヒットした記事を読むのだが、たまに書いてあることがいい加減だったり、本人が知ってか知らずか嘘だったり。そう簡単には信用できないものもちらほらと。

 おそらく小学生の頃だったと思うが、先生から「調べ物をするときは最低、3冊の違う本(事典、辞典)を使って調べなさい。」と教わった。
 この記事のように(!)、あやふやな記憶も交えて書くようなものの場合、少なくとも書き手から読み手までの間に記事をチェックする人を経ていない分、多かれ少なかれ誤情報が混在する可能性があることを考えると、今の小学生には「調べ物をするときは最低、100件の違う記事を使って調べなさい。」となるのだろうか。

 1987年に思索社という出版社からハラルト・シュテンプケというハイアイアイ(マイルーヴィリ)ダーウィン研究所博物館教授による「鼻行類」という本が出版された。
 日本語訳にはかの有名な「利己的な遺伝子」の訳者の一人である日高敏隆氏もかかわっている。

 この本の内容はかなり衝撃的で、おそらく出版された時にはかなり話題になったに違いない。
 その話題性は、その昔流行ったエリマキトカゲの何倍にもなっていたはずである。
 残念なことに私はその数年後になってこの本を読んだので、そのブームに乗り遅れてしまったことを今もなお悔やんでいる。

 では鼻行類とはなんぞや?
 読んで字のごとく、鼻で歩く動物のことである。
 この本はその非常に珍しい鼻行類のについて事細かに書かれた唯一と言ってもよい本である。
 一見、専門書風だが図版も多く載っており、それを見るだけでも楽しめるはずである。
 非常に残念なのは、この鼻行類がいたハイアイアイ群島がこの出版された時には既に存在していなかったことである。
 なんとこの原書が印刷されようとしたときに、核実験の影響で群島全てが沈んでしまったとのこと。
 だから今、実物を見ようとしても誰も見ることが出来ないのである。
 おそらく私が知った頃にはすでに「ブーム」が終わってしまったのはこれが一番大きいに違いない。

 さて、この本を懐かしく読んでいた私の前にまたまた興味深い本が表れた。
 
 早川いくをへんないきもの」バジリコ株式会社

 写真の方はその第2弾である「またまた へんないきもの」である。
 読んでみるとまさに「へんないきもの」である。
 「いかにも」といういきものから「それはいくらなんでも」といういきものまで様々載っている。
 なまえもへんなものが多いし、絵(寺西晃)もまた白黒ながらリアルに描かれている。
 ちょっとした暇つぶしにはもってこいである。

 こうした本を見ていると、いかにも当たり前のように存在している人間もまた、結構「へんないきもの」じゃないかと思い、嘘と思いたい現実の自分の容姿に対していくらか安心できたりもするのである。