5軒目 とある町の新刊書店
これまでいろんな本屋に行きました。何でも揃っていそうな立派な本屋、専門書ばかりの古本屋、なぜか新刊と古本を半々で売っている本屋、本当に本屋なのか疑わしい本屋...。
このブログでは、そういった様々な本屋の中で自分が気になった(そして気に入った)本屋だけを紹介しています。
しかし今回はかなり衝撃を受けた本屋(新刊書店)だったので、敢えてここに紹介します。
どう衝撃だったかというと
「もう魂が抜けてしまったかのような本屋」
だったのです。
もちろん、これまでにも小さな新刊書店や古本屋はたくさんありました。
本当に儲かっているの?と思う程の。
ただそれらの本屋には「まだなんとか生きているよ」という感じが(失礼ながらも)しました。
それこそ儲けなんて二の次で、余生を楽しむためにやってますといった感じの本屋さんだったり。
でもこの本屋は違いました。
遠くから看板をみつけたときは、意外な所にあったと喜びました。
でも本屋に向かっていくうちに、だんだんイヤな予感がしはじめました。
本屋の全体が見える所まで来た時、失望感が漂い始めました。
ドアを開けようとして中が見えた時、イヤな予感が当たったと思いました。
そしてドアを開けて店主と目が合った時、なぜかこのままでは逃げられないと思いました。
店主の目が死んでいる....。
店主はおじいさん。すでに70歳は過ぎているんじゃないだろうか。
私をギロッと一瞬にらんだ後、視線を落としました(その後、私が本を買うまでずっとその状態)。
何はともあれ、いつものように店内を一通り眺めた後は、なにか文庫本を一冊買ってさっさと出ようと決めました。
が、見るべき本が全然ない。
棚はあってもガラガラ、平積みの台も、台が見える面積の方が広いんじゃないかと思う位。
ちなみに店内の広さは、おそらく前回(4件目)の古本屋の2倍はあったと思います。
雑誌、漫画、ハードカバー、学習書、文庫、新書など「一応」一通りはあるのですが、数がそもそも少なすぎた。
文庫と新書の数はおそらく自分の蔵書数の方が多い。
ハードカバーに至っては絶対、私の蔵書数の方が多い(ざっと数えて50冊程度しか置いてない)。
それだけ少ない。
他人事ながら大丈夫なのかと思いながら棚の空いた所にあった張り紙に気づいた。
「視察目的、お断り」
どういう意味だ!
この店には何か秘密でもあるのか?それとも私のような本屋巡りするようなヤツはお断り?
いろいろ考えた末、思いついた。
どこからか立ち退きを迫られているのでは?
でもそんなこと私が悩んでもしょうがない。早くお店を出よう。
しかし冊数もないので品揃えも少ない。
一刻も早く帰ろうと文庫の棚を見るが買いたい本がない。
このような場合、大抵は芥川龍之介とか夏目漱石とかの薄い名作の文庫を買うことができれば楽なのだが、それさえもない。あったとしても既に持ってる本ばかり。
そして必死に何度も注意深く見て、やっと一冊見つけました。
ルイス・キャロル「不思議の国のアリス」角川文庫
そういえば絵本とかディズニー物でしか知らないし...、訳は福島正実(!)、しかも挿絵は和田誠だ!!
と、自分に言い聞かせてながらモチベーションを高めて、ようやく買いました。
ところで、このお店に入ってから一番よかった事。
文庫カバーがこの店オリジナルのものだったこと。
昔はかなり賑わっていたんだろうなぁ、でもきっと近くにある大きい本屋に負けたんだろうなぁ。
何にしてももう来る事はないだろう。
そう思ってお店を出ました。