本楽家 ( ほんがくか ) 通信

本にまつわるあれこれを楽しむ、日本本楽家協会の活動報告です。

『本の散歩道』最終回 (学習院生涯学習講座)報告


 岡崎武志氏による『本の散歩道』第3回(最終回)。
 今回の主な内容は次の通り。

 1.本を読めば本を読みたくなる。
 2.夏目漱石坊っちゃん
 3.文庫の話(中公、新潮、文春)
 4.絵本の紹介

 1.は本はやっぱり自分で見つけて読んでみるのが一番、ということ。
 確かに人に薦められて(とくに無理矢理)読んでもなかなか「これ!」とうのは見つからない。
 自分で本屋に行っていろいろ探してみる。
 そうして読んだ本が「おもしろいっ!」となったら、もう他人が止めても読み続けるに違いない。

 2.今年は「坊っちゃん」が書かれて100年目。
 でも以外と読んでない人が多いのでは?
 「坊っちゃん」の舞台といえば松山!なのだが、
 岡崎氏の指摘によると小説の中に松山というのは一言も出ていない(!?)そうだ。
 私は読んでいるのだが、あれ、そうだっけ?

 要確認。

 また、教頭の「赤シャツ」は洋服を着ているというイメージがある。
 しかし(ある学者の指摘によると)教頭はいつも和服を着ている!
 これは文章中に出てくる。

 読んだとはいっても読んだ人のイメージは中身とは勝手に作られてしまう事が往々にしてある。
 新潮、角川、集英社、岩波とそれぞれの文庫をみてもイメージが異なっていてそんなところが面白い。
 
 いわゆる学術論文ではないのだから、厳密さは必要ないかな。
 読者一人一人がそれぞれのイメージが持てるような小説も悪くはないかななんて思った。

 3.岡崎氏が文庫の解説目録を貰ってきてまずやること。
 前回貰った解説目録と比較して、絶版になった文庫をチェックする。
 ちなみに絶版になった文庫が見つかると、岡崎氏はほくそ笑むそうだ。
 「消えた作品に愛着を持つ」という事だそうだけれど、これには私もつい「共感」してしまう。

 4.絵本として「月刊 たくさんのふしぎ」を紹介。
 これは面白い!
 大人でも十分楽しめる。
 私は昔から「子供の科学」(とくに読者の発明のコーナー)が好きだけれど、そんな感じ。
 やっぱり子供にはいい加減な本を読ませちゃいけないなと思った。

 以上で、この「本の散歩道」は修了となった。

 全3回の総括として感想を書いておく。

 これは、まったく本を読まない人や、読みたくてもどこから手を付けて良いかわからない人にこそ是非参加してもらった方がよいと思った。
 3回の講座で様々な本の紹介をしてもらったが、どれも読んでみたくなる本ばかりだった。
 岡崎氏の話術にずっぽりハマって読みたいと思える本が必ず見つかると思う。

 では私のような本好きにはどうかというと、これはまた得るものが多い楽しい講座であった。
 やはりというと失礼だが、物書きのプロとしての本の読み方、楽しみ方は違っていた。
 似たような事をしていても、その楽しみ方に深みがあった。

 例えば先の解説目録の比較で、文春文庫における瀬戸内寂聴さんの作品が全て全滅していた。
 しかし、新潮文庫を見るとそのような現象は全くない。
 ここで思う。

 文春と瀬戸内さんの間で何かトラブルがあったのでは??
 真偽の方はともかく、こんな裏を考えてしまうような楽しみというのはできそうでできない。

 もっともっと受けたい講座であった。

 最後にアンケートがあったのだが、そのなかに講座料についてどうかという設問があった。
 私は講座料は高いとした。
 が、これは値段を下げろ!というよりもっと回数を増やして欲しいという気持ちで高いとした。
 値段が下がっても3回のままよりは、同じ値段で4回とか5回(図々しいか)の方が嬉しい。

 秋には明治大学で講座が開かれるらしい。
 是非とも参加しようと心に誓った次第。