本楽家 ( ほんがくか ) 通信

本にまつわるあれこれを楽しむ、日本本楽家協会の活動報告です。

「新潮文庫の100冊」トリビア(?)


 ゴールデンウィークももうすぐ終り。
 さて気分を切り替えて、次の長期連休である夏休みの計画を考えましょう。

 では夏休みとくれば何を思い出すかといえば、ここは「新潮文庫の100冊」でしょう。
 このフェアに対して、目立った所では角川文庫、講談社文庫、集英社文庫、旺文社文庫などフェアが過去に(いくつかは現在も)ありましたが、どのフェアもこの「新潮文庫の100冊」の牙城は崩せませんでした。

 例えば角川文庫では「角川文庫の名作100」がありましたが、今はあまり100冊を全面に出していません。
 講談社文庫も100冊にたいして「BEST105」なんていうのもやっていました。
 ちょうど今「講談社文庫の100冊」というフェアを他社に先駆けて(?)やっているようですが、その100冊がイマイチ把握できない(冊子が欲しい)。
 集英社文庫は100冊よりも自分にとっての1冊を!という意味合いなのか、「ナツイチ」(「夏の一冊」)というのやっていますが、これは「100冊戦争」に対する敗北宣言ともいえるでしょう。
 旺文社文庫に至っては文庫そのものが既に新刊書店には存在しない。

 というわけで夏休み、夏、といえば「新潮社文庫の100冊」なのです!!!

 さて、かなり強引にここまで私の主観的な見方で書いてきましたが、結局の所、私が「新潮文庫の100冊」が好きなだけ、そして新潮社の人に頼まれてもいないのに少しアピールしてみたいだけなのです。

 そこで勝手にアピール第一弾(以降続くかは未定)として、「新潮文庫の100冊」に関するトリビア的な話題を客観的に書いてみます。
 すでに知っている、内容がつまらない場合はご容赦。
 もしひとつでも「へぇー」という話題があれば、お手持ちのトリビアボタン(?)をお好きなだけ連打ください。
 持っていない方はマウスパッドや机の角っこ、自分の膝など叩いても問題ないところをお好きなだけ連打ください。

 前置きが長くなりましたが、さて本題へ。
 なお以下で1冊という場合はシリーズ物でも1冊で計算している。

1. 「新潮文庫の100冊」の歴史は今年で31年目に入る。

 「新潮文庫の100冊」の始まりは1976年で、昨年の2005年で30回目を迎えた。
 この「100冊」に注目すると、1969年の「ベストセラー100」を皮切りに、1975年の「新潮文庫のベスト100」まで、ベストセラー100冊を集めたフェアを実施している。
 ちなみに1968年は「夏休みの読書プランは<<新潮文庫>>で!」と題して50冊しかあがっていないことから、少なくとも1968年までは「100冊」に注目したフェアはまだ定着していなかった。
 
2. 「新潮文庫の100冊」に昨年まで全て選出(30回)されている作品は11作ある。

 その作品を以下に示す。
 井伏鱒二     「黒い雨」
 太宰治      「人間失格
 夏目漱石     「こころ」
 宮沢賢治     「銀河鉄道の夜
 三浦綾子     「塩狩峠
 カフカ      「変身」
 カミュ      「異邦人」
 ドストエフスキー 「罪と罰(上・下)」
 ヘッセ      「車輪の下
 ヘミングウェイ  「老人と海
 モンゴメリ    「赤毛のアン

 おそらく「あれ、あの作家がいない?」と思われるような作家もいるがそれは3.で登場するかもしれない。
 
3. 「新潮文庫の100冊」に昨年まで全てに選出(30回)されている作家は19人いる。

 その作家を以下に示す。
 芥川龍之介   安部公房     井伏鱒二 遠藤周作    川端康成  谷崎潤一郎 太宰治
 夏目漱石    星新一      宮沢賢治 三島由紀夫   三浦綾子  カフカ   カミュ
 シェイクスピア ドストエフスキー ヘッセ  ヘミングウェイ モンゴメリ 

 2.で出てこなかった8人は複数の作品が代わる代わる登場していたのである。
 ちなみにこの中で登場した作家の中で、作品数が最も多いのは星新一の10作品である。

4. 「新潮文庫の100冊」に最も多くの作品が選ばれている作家は2人いる。

 これは先に上げた星新一赤川次郎である。
 しかしながら、2005年の4月の解説目録で見る限り、星新一が全10冊読む事ができるのに対し、赤川次郎の作品は6冊しか読めない。
 一時のベストセラーで終るか、それとも(著者が亡くなっても)ロングセラーとして読みつがれていくのか、ある種シビアな一面も読み取れるかもしれない。

5. 「新潮文庫の100冊」は常に100冊とは限らない。

 さてこの100冊、本当に100冊かというとそうではない。
 始まった1976年から1999年までは100冊だが、2000年に「新潮文庫の100冊+50」ということをしてから100冊が守られなくなった。
 2000年は確かに150冊だが、次の年2001年は121冊も出ている。
 昨年2005年は100人の「著者」の作品103冊が選ばれている。

 なおこの2005年度の冊子には次のような断りが書いてある。
 『「新潮文庫の100冊」は、キャンペーンの総称です。2005年は100人の作家を自信をもっておすすめします。』

 以上、「新潮文庫の100冊」トリビアでした。

 こうしてみると、結局、新潮文庫も100冊を選出するのを密かに(?)諦めたようです。
 しかしこの「新潮文庫の100冊」は私にとっては毎年、夏の楽しみでもあります。

 今年は何が選ばれ、何が落とされるのかを自分なりに考えてみるのもまた本の楽しみではないでしょうか。


 主な参考文献
 「新潮文庫の100冊」冊子
 「朝日新聞」による「新潮文庫の100冊」広告
 「新潮文庫 解説目録 2005年4月」